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異形の鳥---精衛---
(2011/8/17)

西友

これは私が買い物に良く行く近くのスーパー西友(柏)で目にするポスターである。ポスターの鳥を一瞬カワセミと思ったが、良く良く見るとよりスマートなハチドリである。

ハチドリは山階鳥研でアルバイトをしていた時に、剥製や標本を写真に撮ったことはある。その中には昭和天皇がブラジル旅行で頂いたお土産のハチドリ類もあった。しかし残念ながら、生きている野生のハチドリは撮ったことが無い。
蜂雀
ホバリングをしながら蜜を吸うのがハチドリの大きな特徴で、それに似たものとして、右の写真をご覧頂こう。
スマートさに欠けるが、ホウジャク(蜂雀)と言う虫がホバリングしながらボタンクサギの花蜜を吸っているところで、近所で撮ったものだ。

ハチドリ自体も実に小さく、このホウジャクと変わらないくらいに極小の鳥である。

西友のハチドリは名をクリキンディと言い、森の火事に際し、嘴で水を何度も運んで消そうとした。森の動物たちから何故そうするのかと問われて、クリキンディは「私は私に出来ることだけをしているの」と答えたという南アメリカ伝説の鳥である。

西友は----自分に出来ることで地球を冷やす-----という活動をしているということだそうだ。

買い物袋持参の客には2円値引くのがその運動の一つで、私も鳥博で買ったフクロウ柄のバッグを持参して知らないうちに参加していたのだ。

ところで、2011/3/11以降”私に出来ることで”と言う事をテレビ等で頻繁に目にすることになったことは皆ご存じの通りだ。


西友は兎も角、南米のクリキンディの話に良く似た伝説が中国にもある。名前を「精衛」と言う鳥の話である。偶々鳥に興味を持ち始めた2003年頃何かの本で、汪兆銘の号は「精衛」と言い、その由来が伝説の鳥であると説明されていた。

夏国炎帝の娘、女娃(じょあ)が東海で溺れ死んで精衛と言う小鳥になった。この精衛は、海を埋めてやろうと、来る日も来る日も山の石を咥えて運び自分の溺れた大海を埋め続けた。しかし海を埋めることは出来なかった、と言うお話である。



精衛伝説のモデルになった鳥は何処で見られたのだろう。

大体、精衛が埋めようとした「東海」はどこの海か?炎帝やその娘女娃はいつ頃の人か?私は中国の歴史や地理について何も知らないことに気づく。
慌ててネットで調べた限りでは、定説は無く、炎帝は漢民族の始祖で、紀元前2700年くらい前の伝説上の人物と言う。日本の卑弥呼と同じように故郷論争が起こっているくらいに地理的にも不確かであるが、長江や黄河の流域と考えておこう。海はやはり、長江や黄河が流れ込む渤海、黄海、東シナ海辺り、即ち東アジアと推定される。



山海経(せんがいきょう)と言う本の中で精衛の身体の様子が次の様に書かれているので、それを基に、モデルになった鳥を考えて、遊んでみようと思う。

其状如烏---


この要素ごとに、候補に挙げた鳥に点数を付け、精衛度を測ると言う方法で進めたい。

1.其状如烏
1) 精衛は「烏の如し」と言う事だ。南米と違って、中国の伝説は、まあつまらない鳥に似ているものである。中国の事情は分からないが、私なりに烏のイメージを考えてみる。

烏を日本ではカラス科としてみると相当数の種がいる。先ず、私の知っている烏はハシブトガラス(57cm)やハシボソガラス(50cm)で、体の色は黒、大きさは50---57cmと、かなり大きい。

この二つの種は英語名でも"Crow"が付く。

この黒と大きいことが私の烏のイメージの基本である
ハシボソ ハシブト
ハシボソガラスハシブトガラス
2) 2010年初めて群馬県の板倉町で見た嘴基部が白いミヤマガラス(45cm)も体色が黒いカラスである。私の烏のイメージからずれてない。

英語名では"Rook"で、"Crow"は付かない。

2011年初めて見たコクマルガラスは体長33-36cmとやや小さく、広範囲に 白色部 があり、ホシガラス(34cm)と共にカラスのイメージを広げる必要が出てくる。

この二種も英語名では"Crow"は付かない。
ミヤマ コクマル ホシガラス
ミヤマガラスコクマルガラスホシガラス
3) 更に「カラス」名の付かないカラス科の鳥もいる。オナガ(34-39cm)やカケス(33cm)である。色調も大きさも変わってくる。

未だ見たことの無いカササギ(45cm)も図鑑で見る限り、烏のイメージとは違う。

英語ではカケス=Jay、オナガ・カササギ=Magpieである。
オナガ カケス
オナガカケス
4) 以上の鳥を色と大きさで独断的に分布してみると、烏のイメージ度合いで三つのグループになった。

Aグループ : 日本語で「カラス」名をつけて呼ばれる鳥の内ハシブトガラス、ハシボソガラス、ミヤマガラス----体色は黒色が基調

Bグループ : 「カラス」名の付いたコクマルガラスやホシガラス----白色の混じる

Cグループ : 「カラス」名の付かないカラス科のオナガやカケス----灰色・褐色気味

候補の鳥に付ける点数の基準をこれも独断的に仮定してみた。
分布

2.文首
1) この意味は首に文様があるとの意だ。文様は形や色の違い、組み合わせだろう。 文首
2) キジバトの首の模様がまず思い浮ぶように鳩類の多くの鳥の首に文様が見受けられる。
3) 首に2色以上の色がある場合も文首とする。但しホシガラスの様に文は首以外にも跨る場合は文首とはしない。
4)
文首
有り2色以上無し
1050
キジバト

3.白喙
1) (口)嘴が白いと言う事である。 白嘴
2) オオバンの嘴の様な白さを基準としよう。
3) 光線の具合で、多くの色が白っぽく見えることも"白嘴"とみなす。
4)
白喙
光線の具合赤など
1050
オオバン

4.赤足
1) 足が赤いと言う事である。 赤足 赤足
2) 右の画像ミヤコドリ、ユリカモメの足を"赤足"とする
他にカワラバト、セイタカシギ、ブッポウソウ、アカアシシギ、カワセミなど思いつく。
3) 赤褐色も"赤足"とみなす。
4)
赤足
赤褐色
1050
ミヤコドリユリカモメ

5.

鳴
1) 山海経の訳本を見ると「鳴くときは自分の名を呼ぶ」-----鳴き声が種名になったということらしい。「精衛」を「せいえい」と私は読んでいるが、中国語ではどう発音するのか不明である。
2) 上記の鳥の中で「ジェイ ジェイ」と鳴くカケスの英語名は「jay」。まさに自分の名を呼ぶ。この「jay」音が「女娃」や「精衛」に聞こえることは無いであろうか。「精衛」を「セイエイ」と考えると、「女娃」より似ていることは確かだが、-----

当面不問にしよう。

6.精衛のイメージ
1) 色的には黒が基調。
2) 大きさは40cm〜60cm。
3) 首に文様、嘴が白、足は赤
4) 尚、この要素間に価値の差は無いものとする。

7.個別検討
僅かしか無いが私の見たことのある鳥の中で精衛のイメージに似ているものがあるか検討してみよう。

1)

カラス
山海経では烏に似ていると言っていることからして、烏ではないのであろう。

2)

オオバン
水辺に生息しているオオバン(39cm)は体が黒色で、嘴が白く、この2点で似ている。
しかし首に模様は無く、足の色も黄緑で、この点は違う。
英語名では"coot"と言い、辞書を見ると「愚鈍」の意味もあるそうだ。何のことは無い、私「鈍射」の英名"dull shooter"の"dull"と同類だ。炎帝の娘、女娃(じょあ)のイメージは何も無いのだが、お姫様であるので、「鈍」と言うのは憚られる。
余談だが、「鳥類学」によればAmerican Cootは賢く、自分の産んだ卵の数を数えるそうだ。

種名体色体長文首白喙赤足合計
オオバン105010025

3)鳩

鳩類は首に文様が目立ち、足が赤いのが多い。光線の加減では嘴も白っぽく見えものもある。海に繰り出すアオバトだけでなく、水辺は生活圏である。

鳩の中でもドバト、カワラバト(体長33cm)は極めて黒っぽいのもいて候補に挙げられそうだ。

しかし、鳩は世界的に極めて一般的な鳥であり、我が「常識の鳥」にも入れている。古代中国においても紀元前から烏と鳩の区別はつけられたであろう。鳩を候補にするのは無理そうである。

ドバト
ドバト
ところで、ハト科と言いながら一般の鳩より二周り大きく、より黒っぽいカラスバト(体長40cm)は如何であろう。
写真で落ち着いて見れば鳩のイメージは明らかにある。私は三宅島で、雨の中遠目に見た時は、大きくて黒っぽく鳩のイメージは湧かなかった。名前からして「烏」似である。嘴も白く見えないことは無い。首の文様、足の赤もクリアしている。
分布は如何だろう。BIRDS OF EAST ASIAを見ると分布はCTKJRと書いて有る。しかし分布図には色が塗られてない。あるのは緑色の矢印ばかり。稀と言う事だ。稀であるが故に、伝説が作られる神秘性がある。
カラスバト カラスバト
カラスバトカラスバト
種名体色体長文首白喙赤足合計
カワラバト551051035
カラスバト8101051043
 

4)水辺の鳥
女娃は溺れたのであるから泳ぎの得意な鴨などの水鳥ではないであろう。そこで思い浮かぶのは足が赤く、体が黒っぽい鳥にはミヤコドリ(45cm)、ユリカモメ(40cm)がいる。首の文様は微妙である。但し、いずれも嘴が赤いことは明らかにイメージに反している。候補とするのは難しい。

その点セイタカシギ(37cm)は嘴は黒く、光線の当たり具合では白ぽく見えることもある。首の後ろが黒いのもおり、文様と言えないこともないか。東アジアに分布している。余計な事かも知れぬが、すらりとした体形は、お姫様性も備えているように思われる。候補から外したくない。
セイタカシギ
セイタカシギ
ツルシギ(31cm)やアカアシシギ(28cm)は如何だろうか。

ツルシギの場合は相当に黒いものがいる。足は適当に赤い。しかし文様は首以外に跨っている。嘴も白とは言い難い。分布はまずまず。いずれも30cm前後と小さい。
ツルシギ アカアシシギ
ツルシギアカアシシギ
首の文様で図鑑を繰ったらレンカク(39-58cm)の首は綺麗な色遣いであることに気づいた。分布はいい。 嘴は白く見えないことは無い。足はオオバンと同じく黄緑色で赤くは無い。初列風切に黒があるが、羽の大部分は白く、烏に似ているところは、大きさくらいか。

候補にあげるには可也無理がありそうだが、飛ぶ姿は優美で捨て難い。ダークホース。
レンカク
レンカク
種名体色体長文首白喙赤足合計
セイタカシギ85551033
アカアシシギ33001016
ツルシギ85001023
ミヤコドリ810501033
レンカク310105028
ユリカモメ510501030

5)その他
「怪奇鳥獣図鑑」と言う本を手に入れた。江戸時代、山海経に基づいて精衛を絵にしていた。その精衛を見て驚いた。体の色は黒くなく、雀色を濃くした色。頭は白い。嘴は足と同じく赤ぽく見える。手に入れた頃千葉県にユキホオジロが現れ、見に行った仲間の人の写真を見ていたので似ていると思ったものだ。実に可愛く、烏とは全く違う。
詞書の解説の中に鳴き声が書いてあった。「精衛(ジンウェイ)精衛(ジンウェイ)」と鳴くそうだ。

私は未だユキホオジロは見たことが無い。図鑑で見る限り大きさや色合いで私の精衛イメージとは違っている。「怪奇鳥獣図鑑」のイメージが許されるなら、レンカクも十分ありである。

「述異記」をベースとした精衛海燕説がネットにある。私は残念ながら、「述異記」と言う本を手に入れてないが、精衛は雌のみ存在し、雄がいない。ために精衛は海燕と交尾し、子を産む。雄は海燕、雌は精衛になると言う。従って海燕そのものは精衛ではないようだ。

ウミツバメ科を図鑑で見る限り烏に似た黒ずくめの種が多い。嘴や足の色は精衛のイメージとは違うように感じる。大きさは総じて小さい。

種名体色体長文首白喙赤足合計
ユキホオジロ305008
ウミツバメ8350016

8.まとめ
種名体色体長文首白喙赤足合計
カラスバト8101051043
カワラバト551051035
セイタカシギ85551033
ミヤコドリ810501033
ユリカモメ510501030
レンカク310105028
オオバン105010025
ツルシギ85001023
アカアシシギ33001016
ウミツバメ8350016
ユキホオジロ305008

総合点数順に並べたら上の様になった。

ここで、一要素でもゼロ点の場合は、候補から除外することとする。残るのはカラスバト、カワラバト、セイタカシギの三つである。

更にカワラバト(ドバト)は烏との判別は昔から間違いの無い常識の鳥であるので除外する。

以上から私の見聞きした鳥で精衛のモデル候補に挙がるのはカラスバトセイタカシギの2種である。

日本の野鳥は550種とか630種とか言われ、その内私が見たり写真にしたのは、未だ半数にもならない。地球で考えれば、桁が違う10,000種に達するほどの数である。恐らく精衛にもっと近い鳥は居るのだろう。そのうち合えるかもしれないと、手賀沼周辺を飽きもせず歩いている。



注   西友のハチドリポスターは2011/3/11を過ぎてしばらくして見なくなった。

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